香りの舞い ~流れる水のように 燃える火のように 静かな大地のように 自由な風のように~

ジャワ舞踊やガムラン音楽に関すること、日々の気付きや学び、海外生活で見聞したこと、大好きな植物や動物に関してなどを、私が感じたことを気ままに、ゆるゆると書いていきます

ジャワの雨除け

今日はうちの辺りは一日中雨で、結構激しく降った時もありました。それで、またジャワでのことを思い出しました。

ジャワでは、雨期は毎日のようにスコールが降るわけですが、雨が降ってほしくない重要なイベントの場合、雨除けを頼むことがあります。Pawang hujanと呼ばれる超能力者(?)のような方に頼むのです。田舎の方ならどこの村にもこのような方がいらっしゃるようです。こんな話は、前世代の話かなと思っていたら、私も実際に体験したのです!

以前、あるNPO法人で2年強、働かせていただいていたことがあり、ジョグジャカルタに駐在して、ムラピ火山の村コミュニティと連係した防災/減災活動に携わっていました。その時に、ある村のコミュニティと、地元の伝統芸能を使った防災啓発コンサートを企画遂行したことがあります。普段は一緒に上演されない、クトプラッとジャティランと呼ばれる芸能を使い、地元の防災の知恵を織り交ぜて、ひとつのストーリーを作り上げました。もちろんガムランの生演奏で、出演者は80人以上。何ヶ月もかけてリハーサルを行って準備をしました。ところが、本番日近くなると、毎晩土砂降りの雨が降るようになり、当日も危ういかなと思われていました。舞台は、前日に、村役場に仮設舞台を村人たちが作ってくれたのですが、舞台に屋根はあっても、観客席には屋根はありません。また、舞台を作っている時も、何度もスコールで中断を余儀なくされました。それで、当日は雨除けの方を頼もうということになりました。

私は本当に効くのか半信半疑でした。現地は、ジョグジャカルタスラカルタの間のクラテン県にあり、ムラピ火山の中腹、標高1000mぐらいの場所でした。当日夜、ジョグジャカルタスラカルタでは土砂降りの雨が降ったにもかかわらず、その場所では、見事に雨が全く降らなかったのです!本当にお見事というしかない現象でした。私自身も出演しており、また企画側の人間としていろいろバタバタして、その雨除けの方にお会いしそびれたのですが、小柄な男性だということです。私の友人の話では、精霊(?)とお話しして、雨を止めてもらうのだとか。まあ、本当のところはわかりませんけれどね。こんなに効くとは思わなかったので感動しました。ただし、雨は降らなかったのですが、大風が吹いて、出演していた村人たちは。もしかして自然の怒りをかってしまったのではないかと恐れていたと、後で聞きました。いろいろあるのですね…。コンサートは大成功で、政府や防災関係者、村人たち合わせて900人ぐらいの老若男女の観客を集めました。夜中の1時過ぎまでやっていたのですが、小さな子供たちも熱心に見ていてくれて、とても嬉しかったです。防災の知恵も効果的に伝えられたかな。

以下、公演の様子の一部です。

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「2015_04_25 Mitigasi Erupsi Merapi, Ketoprak Bertemu dengan Jathilan, Sejarah Erenging Gunung Merapi, Asesirah Siogo Ing beboyo」

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「2015_04_25 Mitigasi Erupsi Merapi, Ketoprak Bertemu dengan Jathilan, Sejarah Erenging Gunung Merapi, Asesirah Siogo Ing beboyo」

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「2015_04_25 Mitigasi Erupsi Merapi, Ketoprak Bertemu dengan Jathilan, Sejarah Erenging Gunung Merapi, Asesirah Siogo Ing beboyo」

私も前座で踊らせていただきました。

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「メナッコンチャル by Kaori」

実は、この企画はJICA草の根事業の一環として行われたのですが、領収書を村側の責任者からもらった時に「pawang(雨除け)」と書かれた領収書があり、どうしようかと思いました。いくら何でも、JICAに雨除けの領収書は認められないでしょうね。説明しようがないですし。それが認められるぐらい、頭が柔らかいと面白かったのでしょうが。

スラカルタでも、私が留学していた国立芸術大学が、サソノムルヨと呼ばれる、王宮の敷地内にあった時代の80年代には、試験の時に雨除けの方が活躍されていたそうです。その頃の学長の方針で、試験の時に雨が降り、音がちゃんと聞こえない状態だと不合格になったそうです。プンドポと呼ばれる壁のない建物だったので、雨が降れば、ガムランの音が聞こえなくなります。ですので、ガムランの試験はもちろん、舞踊も影絵芝居もガムラン音楽が必須なので、必ず雨除けの方を頼んでいたそうです。雨除けの方を頼んで、雨が降らないようにするのも学生の義務だったそう。この話にはぶっ飛びました。雨除けって、街中でもジャワでは最近までとても身近なものだったのですね。

まだまだ、不思議な事満載のジャワ。また、ぼちぼち、ジャワの不思議に関しても書いていけたらと思います。

 

読んでくださって、ありがとうございました。

 

<今日の植物(庭の植物シリーズ)>

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ジギタリスの大株」photo by Kaori