コミュニティに還元する精神
ジャワでは、お金のある人がコミュニティに富を還元するという意識が、当たり前のように根付いているとよく感じます。
今日もジャワの友人とWhatsApp で連絡を取っていると、今夜、ワヤン(影絵芝居)を見に行くというので、何のためのワヤンか聞いてみると、"sunatan massal (集団割礼) "と。ジャワではイスラム教徒の男の子は、ある程度の年齢に達すると、割礼を行います。ですので、割礼は珍しくないですが、集団でやるのかとびっくりして、聞き直してしまいました。
そのような、人生の通過儀礼の時は、最近はめっきり少なくなったとはいえ、伝統的に、ワヤンなどの伝統芸能が上演されます。ワヤンは関わる人数が多いので、数十万のお金がかかったりするらしいです。
よく聞いてみると、今回の集団割礼もワヤンも全て、1人の女性がスポンサーとなって行なっているとのこと。すごいですね。その方は、私も会ったことがあります。もともとプシンデン(ジャワガムラン音楽の女性歌手)だったのですが、結婚を機に食堂を始め、それが当たって、今では、インドネシアのあちこちにレストランを持っているとのこと。とても、豪快な、さっぱりした、気さくな女性です。年は60歳前後でしょうか。
今回は、彼女が自分の食堂を始めた記念日(何周年かは知りませんが)として、コミュニティのために企画したとのこと。これで何十人も割礼するようです。お金のない家庭では大助かりでしょうね。
また、数日前は、カラウィタン(ガムラン音楽)のコンテスト(lomba)も主催していたとのこと。普通は政府関連機関がそのようなコンテストを主催することが多いので、個人が主催するとはびっくりです。伝統芸能に対する並々ならぬ愛情を感じます。その地域で伝統芸能を隆盛させよう、守ろうという熱意もヒシヒシと感じます。よくご自分のジャワ歴の誕生日(35日ごとに巡ってきます)にもワヤンを主催しているようで、私も一度、前座で踊らせていただいたことも。
「メナッコンチャル by Kaori」
余談ですが、この写真、アスファルトの上で踊ってますね。本当はじゅうたんを敷いてくれていたのですけど、踊りにくいし、お客さんからも見やすい位置ではなかったので、アスファルトの上で踊っちゃいました。ジャワではこんなことも日常茶飯事。土の上とかもありです。逆に王宮の大理石の上ということもありますけど。
話を戻します。ジャワでは、伝統芸能上演の場も昔に比べて減っているので、そういう場をどんどん作り、それによって、関わる人たちも潤っていくというのは、素晴らしいです。ジャワ芸能の中に含まれる、たくさんの重要なフィロソフィーも次世代に伝えて行けますし。
とにかく、彼女が自分の富をコミュニティに還元していこう、自分がかつて関わっていた伝統芸能の世界も隆盛させていこう、伝統的なジャワ文化を守っていこうとする意識には頭が下がるばかりです。素敵ですね。
でも、ジャワでは伝統的に、こういう姿勢が当たり前のようです。コミュニティの潤滑油のようなものでしょうかね。
私でもジャワでは、日本人であるということだけで、お金を持っていると勘違いされ、ある程度、寄付したりを期待されることも結構ありました。でも、私はひねくれ者で、頼まれるとやりたくなくなってしまうのですよね。自分から寄付したいと思ったときは、少ないお金ながら寄付するのですけど。ちょっと、ジャワの方のようには、まだまだ成れないなぁ。でも、金銭的なことでなくても、自分のできることで社会に還元していければ良いなぁとはいつも思っていますけれどもね!
<今日のお花>
photo by Kaori