いつも読んでくださってありがとうございます。
昨日は、午前中と夜、マンクヌガラン王宮での舞踊/ガムラン練習がありました。
午前中は、観光客に公開中の大プンドポで、夜は、誰でも参加オーケーなコミュニティ向けの練習が、東側の小プンドポで行われます。
ここの練習に参加し始めて、早15年が経とうとしています。もちろん、途中で間が空いていますけれども、長くお世話になっています。
なによりも素晴らしいのは、どちらも生演奏で舞踊の練習ができること。ジャワ舞踊とガムラン音楽は、密接な関係がありますし、毎回、少しずつ変わる、生き物のようなものなので、一緒に練習するのが良いと思うのですが、今では、生演奏で舞踊の練習ができる機会が少ないと思います。
昔は、演奏出来て、歌えて、踊れて、影絵芝居もできる人も多かった、少なくとも演奏ができて、踊れる人が多かったと思いますが、今ではすっかり分業制。両方、それなりのレベルでできる人は少なくなったようです。その辺りに、西洋的な、実用主義的な、経済優先主義的な考えが入ってきているのかなぁとも思います。
そんなわけで、ガムランのことが理解できていない踊り手や、踊りのことが理解できていない演奏者も、なかなか多いなぁと感じます。
踊り手の場合、音楽をききながらではなく、カウントを取りながら踊ったりするので、いくらとてもうまく踊っても、ガムラン音楽との流れにあわず、非常な違和感を感じることもしばしば。音楽はカウントだけじゃなく、それ自体に、音の流れ、波というものがあると思うのですが、カウントで踊ると、音楽との乖離がどうしても生まれると思うのですよね。ですので、私は数えません。私が教える時も、出来るだけ数えないようにしています。
演奏者でも、踊り自体の持つフィーリングを理解せずに演奏する人も多い。そうすると、やはり踊りと合わないし、踊るほうにしてみても、非常に踊りにくい。
やはり、お互いへの理解と思いやりが大事だと思うのですよね。
こんなことは、外国人の私が言うことではないかもしれませんが、真剣に、踊りもガムラン音楽も勉強してきて、ジャワでも多くの公演をさせてもらい、僭越ながら、それなりに、現地の方々からも認められてきたと自負しているので、これは伝えるべきことなのではないかと感じています。実際、伝統的なジャワ人の方々は、そういうことをお互いに言わないのです。(でも、裏で何を言っているのかわからないという怖さもあります。)でも、私の先生方も、外国人である私にそのことをこぼしたりするわけです。私は、外国人であるので、いろいろなことをはっきり言っても、外国人だから仕方がないと許される面もあります。それを利用して、若い人には、私なりにやんわりと伝えてみるわけです。私だけの意見ではないわけですし、相手に届くことを願ってです。届く人もいますし、届かない人もいますね。それは個人の自由ですから。でも、自然に淘汰されていくのではないかと感じています。それだけの強さが、この伝統芸術にはあるのではないかと。
ちなみに、私が踊りもガムランも同じように力を入れて習得してきたのは、もちろん、どちらも好きであるし、機会や先生にも恵まれたということもありますが、私なりに、伝統を守りたいという気持ちがあったからこそです。そして、そこからしかわからない景色もあるのです。
話が飛んでしまいました。
マンクヌガラン王宮では、生演奏で練習できる機会が多くて、とても良いです。ジャワの4つの王宮それぞれでも、生演奏での舞踊練習は行われていますが、断然、マンクヌガラン王宮は、数が多いと思います。マンクヌガラン王宮の生演奏での公式練習は週に1回だけですが、夜にコミュニティ向けの生演奏での練習が週2回あり、その他にも、録音を使っての舞踊練習が週に2回あります。舞踊学校などに所属していない人でも、これだけ踊れる機会があるのは貴重です。
生演奏で普段から舞踊練習していると、演奏はできなくても、ちゃんときっかけとなる音が聞けるようになるのですよね。なので、演奏の方が間違えても、ちゃんと調整がつくのです。本当に貴重な練習機会です。私は、だいたい初めは演奏の方に入っていて、踊り手が集まった頃に、踊りに参加します。
そして、踊れる仲間のいるすばらしさ。昨夜は、2曲は戦いの踊りだったのですが、私とペアを組んでくれた男の子がとても良かった。彼のことは、少なくとも5‐6年は知っていると思います。以前からうまかったですが、ますます磨きがかかった感じ。若い子が成長するのを見るのは喜びですね。
こういう戦いの踊りは、踊っている時に、相手から意識を外さずに、言葉ではない、意識の交流ができる相手と踊ると、本当に楽しいです。ジャワ舞踊は、かなり抑えた踊りですが、うまい人は、大抵、静かですが、すごい気と存在感を放ってきます。それも自然に。私にとっても、とても勉強になりますし、そこから学べることは大きいです。手取り足取り教えてもらうより、感覚で感じ取れることの方が大きいです。昨夜は本当に楽しかった。
なかなか難しいかもしれませんが、こういうことも、今後、日本でも伝えていけたらなと思います。
夜の練習時の友達の撮影した写真を借用させていただきます。
読んでくださってありがとうございました。
あなたにとって素晴らしい一日となりますように。