香りの舞い ~流れる水のように 燃える火のように 静かな大地のように 自由な風のように~

ジャワ舞踊やガムラン音楽に関すること、日々の気付きや学び、海外生活で見聞したこと、大好きな植物や動物に関してなどを、私が感じたことを気ままに、ゆるゆると書いていきます

マンクヌガラン王宮のバティック:「バティックと日本」展を終えて ~ バティック編(4)

いつも読んでくださってありがとうございます。

まだまだ続く「バティックと日本」展に関してです。

今日は、王宮のバティックに関して。

☆なお、バティックの写真は、所有者の許可を得て掲載しています☆

 

私が長い間お世話になっているソロ(スラカルタ)のマンクヌガラン王宮では、結婚の儀式関連に使用するバティックなどが展示されていました。その他にも、26日に、ディスプレイを手伝ったので、いろいろ見せてもらいました。

 

まず、このバティック。どういう模様なのか、たぶん説明してもらったのですが、残念ながら忘れてしまいました。もしかして、Sekar Jagadに一種だったのかな。

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「マンクヌガラン王家のバティック」photo by Kaori

そして、こちらがSekar Jagad。世界の花を意味します。世界中の花々が集まったようなモチーフ。

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「マンクヌガラン王家のバティック。Sekar Jagad」photo by Kaori

そして、以下のバティックは、名前はわかりませんが、男子の割礼の儀式の時に着用されるものだそうです。

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「マンクヌガラン王家、割礼儀礼の時に着用するバティック」photo by Kaori

これを見せてくれているのは、マンクヌガラン王族のバサラさん。「僕がもう一度割礼したら、死んでしまうよ~」とジョークを言いながら、見せてくれました。

 

そして、こちらが、マンクヌガラン王家の結婚関連の儀式で着用されるバティックのディスプレイ。でも、いろいろ持ってくるのを忘れたようで、完全なものではないですけれども…。そんなところもインドネシアらしい。

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「マンクヌガラン王家の結婚関連の儀式で着用されるバティックのディスプレイ」photo by Kaori

まだ、準備段階で、説明書きも張られていない状態ですけれども…。

ちょっと私なりに説明しますね。英語で書かれているパンフレットをいただいたので、それを基に説明しますが、そのパンフレットの英訳自体がちゃんと合っているかが不安ですので、それを加味してお読みくださいね(笑)。

 

左の一番上の布は、マンクヌガランの伝統では、Pasang Tarubと呼ばれる、結婚関連儀式の一番初めの儀式に、花嫁のご両親が着用するもの。Dhengklungと呼ばれるモチーフです。Panembahan Senapati王の時代(1587-1601)に発祥したLurikと呼ばれる織物の一種だそうです。実は、このモティーフのパターンは老年の無力さを表すとか。しかし、年を取った人は、豊かな知識、科学、経験、知恵を身に付けているので、腰を低くかがめているのであると、パンフレットには記載があります。

 

そして、右の一番上は、Siramanと呼ばれる儀式で、これから結婚する二人のご両親が身に付けられる模様です。モチーフの名前はCakar。これは地のモチーフの名前です。この布には、その上にガルーダ(鳥)のモチーフが描かれていますね。Cakarの模様には、これから結婚するカップルが、自立した人生を送れるようにとの願いが込められているとのこと。

 

そして、左の上から2番目の布は、Nyantri (花婿の結婚前夜の儀式)に花婿の両親によって着用されるもののひとつ。Grompolと呼ばれるモチーフです。Grompolには、集まる、または一緒になるという意味があり、円満な成長への希望のシンボルだそうです。

 

右の上から2番目の布は、Wahyu Tumurunと呼ばれるモチーフ。これは、マンクヌゴロ7世の王女であるGusti Noeroel 所有のバティック。Gusti Noeroelは、上記のバサラさんのお母上。バサラさんは連れ子で、本当のお母さまではないそうですが、本当の子供の様にかわいがってくださったということです。

余談になりますが、Gusti Noeroelは、超美人で有名な王女様で、1937年のオランダのユリアナ女王の結婚式にご両親とともに招かれ、結婚式のプレゼントとして、ジャワ舞踊を舞われたそうです。その時の音楽は、マンクヌガラン王宮からラジオを通しての生放送だったそうで、それがジャワ初のラジオ放送とされています。当時のラジオ放送のことですから、途中で音が途切れることもあったそうですが、その時は、父のマンクヌゴロ7世が、ビートを取って、無事踊り終えたとか。ちなみに、母はジョグジャカルタのスルタン王家の王女様です。Gusti Noeroelも、毎週日曜日にジョグジャカルタへ舞踊の稽古に通われたということですし、マンクヌゴロ7世の時代は、結婚を機にマンクヌガランの踊り手をジョグジャカルタへ学びに行かせ、ソロ様式とジョグジャカルタ様式が混じって、今のマンクヌガラン様式が確立された時代です。

話をバティックに戻します。

Wahyu Tumurunのモチーフのバティックは、Siramanの儀式や、Midodareni(花嫁の結婚前夜の儀式)で、花嫁になる人が身に付けます。また、花婿になる人がSiramanの儀式の前か後にも身に付けるそうです。美徳と知恵によってあらわされる神からの祝福のシンボルとされています。

 

また、左の上から3番目はSida Asihと呼ばれるモチーフ。花婿となる人が、花嫁となる人の家族の家を訪れる時に、このモチーフのバティックを身に付けるのだそうです。愛情深い雰囲気の醸成と二人が作っていく家族の愛を象徴しているとのこと。また、結婚儀式の時も身に付けられることもあるそうです。

 

右の上から3番目と、一番下の段の2枚は、Sida Muktiか、Sida Luhurのモチーフだと思いますが、私には、いまいち違いが分かりません。どれも、結婚の儀式の時に身に付けられることがあるとのこと。Sida Muktiは裕福な繁栄している人生への希望を象徴、Sida Luhurは、着る人の身体と精神がいつも高潔であることへの希望を象徴しているそうです。

 

長くなったので、今日はここまでにしますね。

バティックの模様に込められた意味、どれも深い意味と希望が込められているのですね。その願いが込められて、一枚一枚バティックが作られていると思うと、感動です。

 

読んでくださってありがとうございます。

あなたにとって素晴らしい一日となりますように。

 

<今日の植物(庭の植物シリーズ)>

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「エゾリンドウの花」photo by Kaori