香りの舞い ~流れる水のように 燃える火のように 静かな大地のように 自由な風のように~

ジャワ舞踊やガムラン音楽に関すること、日々の気付きや学び、海外生活で見聞したこと、大好きな植物や動物に関してなどを、私が感じたことを気ままに、ゆるゆると書いていきます

映画「海を駆ける」

お題「最近見た映画」

インドネシアアチェで撮影された、深田晃司監督、ディーンフジオカ主演の映画「海を駆ける」を見てきました。

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海を駆ける、映画館のポスター」photo by Kaori


インドネシアが題材ということで興味があったのと、主要出演者の一人、セカール・サリちゃんが、ジョグジャカルタに私が住んでいた時のお友達なのです。彼女とは一緒にジャワ舞踊を踊ったこともあり、また彼女の紹介で、ジョグジャカルタの新聞に私の特集記事が載ったこともありました。ここ5年ぐらい会ったことはありませんが、Facebookでは繋がっていて、ヨーロッパへ行っているなぁと思っていたら、インドネシアに戻っていて、いきなりの映画出演で、ディーンフジオカさんとの写真がFacebookに出ていてびっくりしました。

私の住んでいる愛知県では上映されている映画館は2か所のみ。先週の土曜日に上映が始まったばかりですが、残念なことに、もう来週には、一日に一回上映のみになってしまうよう。打ち切られる前に見なきゃと思い、急いで夜9時からのレイトショーを見に行きました。平日の夜ということもあるのかもしれませんが、観客は私と妹の他にもう一人だけ。ほぼ貸し切り状態でした。

 

映画は、とても自然な感じでした。特に盛り上がる場所もなかったですが、自然に美しく流れていく感じ。でも惹きつけられました。全編中の多くが、インドネシア語と英語、たまに日本語、そしてアチェの言葉らしき言語も使われていました。また、細部にまでインドネシアらしさを出しているなぁと感心しました。映画のサイトによると「心揺さぶる美しきファンタジー」とあり、ファンタジーな部分も多々ありましたが、様々な要素がちりばめてありました。アチェと日本の津波災害、津波に対する考え方、宗教の問題、ハーフの子供のアイデンティティアチェの紛争、自然、生死観、日本軍がインドネシアを占領した時と、日本敗戦後、日本軍人がインドネシアの方々とオランダ軍に対して戦ったこと、などなどです。

映画『海を駆ける』公式サイト 大ヒット上映中

 

余談ですが、映画の中で、アチェのおじいさんたちが日本軍歌を歌っているシーンがありますが、私が住んでいたジャワでも、あの位の年代の方々は、日本軍歌や君が代が歌える方は多いです。私も何度も聞いたことがあります。初めてお会いしたおじいさんでも、私が日本人だとわかると、何回も歌ってくれたものです。私は、申し訳ないような、なんとも言えない気持ちで聞いていました。日本軍が3年間占領した時、日本の教育を押し付けたようですし、日本軍にいろんなものを徴収され大変だったという話も聞いたことがあります。でも、ジャワで日本のことを悪く言う人には、あまり会ったことがありません。ほとんどの人が日本に好意的です。それは、やはり、日本が敗戦後にもインドネシアに残った日本兵が、現地の人たちと共に、インドネシア独立のためにオランダ軍とたたかったからなのでしょうか。また、日本がインドネシアに多くの援助をしているからなのでしょうか。それとも、ジャワの方々の美徳でしょうかね。

 

ディーンフジオカさんの演ずる役柄は、ほとんどしゃべらず、微笑んでいる、不思議な人です。というか、人ではないのかな。不思議な力を持つファンタジーな役柄です。その辺りがあまり理解できなかったのですが、プロダクションノートを見ると、「自然そのもののような、植物のような役柄」とあり、ちょっと納得しました。また、海から現れたということで、ラウ(Laut =海)という名をつけられていたのですが、ラウは、生命を生み出し、生命を奪う、海そのものなのかもしれませんね。本当にそんな役柄をうまく演じていらっしゃいました。

映画『海を駆ける』公式サイト 大ヒット上映中

 

あと、タカシ役の大賀くんの役作りがすごい。わたしは、この俳優さんは知りませんでしたが、最初出てきた時は、インドネシア人かと思いました。日本人とインドネシア人のハーフの役柄でしたが、本当に馴染んでいました。インドネシア語もうまかった。また、貴子役の鶴田真由さんの、インドネシア語もうまかったです。自然な演技も良かったし。サチコ役の阿部純子さん、クリス役のアディパティ・ドルケンさん、イルマ役のセカール・サリさんも、それぞれ自然でいながら印象に残る演技を見せてくれました。

 

また、アチェの海の美しいこと!アチェは紛争などでよい印象があまりなく、行ったことがないのですが、ちょっと行ってみたくなりました。

この映画では、津波で失われた命は神様の思し召しと受け入れるという、現地の方々の生死観も浮き彫りにされていました。そのような考え方は、私の住んでいたジャワでもたびたび出会いました。実は、アチェへは私のインドネシア人の友人たちが支援に行っていました。それで、津波から10年以上たって(今年で14年ですね)、現地の人たちに間で、津波の時の教訓を生かそうという意識が薄れてきていると聞いています。全く防災意識のない人も大勢いるとのこと。半分以上の住民が津波の後に移住してきたからということもあるのかもしれません。何もかも神様の思し召しかもしれませんし、おせっかいかもしれませんが、ぜひ津波の教訓を次回に生かして、被災者を減らすようにできると良いのになぁと思います。

 

それから、興味深いことに、プロダクションノートを読むと、撮影中、雨除けの祈祷師を頼んでいたと書いてあります。 さすがインドネシアスマトラ島の北端、アチェでもジャワと同じなのですね。どういうやり方なんだろうか。興味津々です。私も以前、ジャワの雨除けについてブログを書きました。以下からご覧いただけます。↓

ジャワの雨除け - 香りの舞い ~流れる水のように 燃える火のように 静かな大地のように 自由な風のように~

 

映画は全体的に、ファンタジーと現実が交錯し、ゆったりと自然に流れていく物語でしたが、後味の良い、妙に印象に残る映画でした。ちょっと恐ろしさを感じさせるシーンもありましたが、最後の、みんなで海を駆けるシーンも良かった!観客の想像力、受け取り方に多くを委ねている素敵な映画でした。なんだったのだろうと、後々まで考えさせられるような。

興味のある方は、早めに見に行かれることをお勧めします。

 

<今日の植物(庭の植物シリーズ)>

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マロウの蕾。もうすぐ開花です。」photo by Kaori